

冬を彩る花 ヤブツバキ

ツバキは、古くから、私たち日本人にとって、非常になじみ深い植物でした。奈良時代の日本書紀や出雲風土記に登場するほか、万葉集にも次の歌があります。

内容は、「紫染めの媒染剤として使う灰はツバキのもので、そのツバキの販売市には多くの人が集まり、そこで出会った君は、何というお名前ですか」です。万葉集では、山野のツバキ(ヤブツバキ)を詠んだ歌のほか、庭に植えたツバキに関する歌、ツバキ販売市を詠んだ歌などが登場します。
ヤブツバキは常緑性の亜高木で、東北地方の海岸線以南の本州、四国、九州の暖地に多く見られ、花は10月~4月にかけて、バラバラと咲きます。種子からは良質の油(椿油)が採れるほか、紅褐色で固い材は、建築材・器具材・彫刻材として使います。その花枝は、茶道でもよく使われます。特に冬場の茶席は貴重で、「茶花の女王」の異名があります。